症例紹介Case

モルヌピラビルによる猫伝染性腹膜炎FIPの治療について 最新の論文の紹介および当院における治療費などについて

川崎市多摩区のトレア動物病院です。

2023年8月に日本の獣医師(千葉県佐倉市ユーミー動物病院の佐瀬先生という方)が投稿した、モルヌピラビルによる猫伝染性腹膜炎FIPの治療に関する論文が、Journal of Veterinary Internal Medicineという大変権威のある雑誌に掲載されました。

全文はこちらから閲覧できます↓↓↓

Molnupiravir treatment of 18 cats with feline infectious peritonitis: A case series

概要

○2022年1月から8月までの間に臨床症状、各種臨床検査およびPCR検査によりFIPと診断された(確定診断されていないものも含む)18頭の猫をモルヌピラビルにより治療した。

○18頭のうち13頭はウェットタイプ、5頭はドライタイプだった。

○治療について

 ・ウェットタイプの症例に対して:10mg/kg 1日2回

 ・ドライタイプの症例に対して:15mg/kg 1日2回

 ・神経症状あるいは眼病変のある症例に対して:20mg/kg  1日2回

 ・上記の投薬量にて84日間モルヌピラビルの経口投与を行った。

 ・1頭のみ99日間投薬している(グロブリンの値がなかなか低下しなかったため)。

○結果

 ・治療開始から1週間以内にウェットタイプの4頭は死亡している(安楽死も含む)。

 ・残る14頭はすべて寛解し、治療開始から2,3日以内に発熱や食欲不振等の臨床症状は改善した。

 ・神経症状、重度の貧血、眼病変や肉芽腫性病変などを示した重症例においても、全頭において症状の回復がみられた。

 ・寛解した14頭は論文投稿時で139-206日間の寛解が維持されている。

 *GS441524で治療した26頭のうち8頭に84日間の治療終了後3−84日で再発がみられたとの報告がある↓

 10Pedersen NC, Perron M, Bannasch M, et al. Efficacy and safety of the nucleoside analog GS-441524 for treatment of cats with naturally occurring feline infectious peritonitis. J Feline Med Surg. 2019; 21: 271-281.

○安全性について

 ・3頭でALT(肝酵素)の軽度上昇がみられたが、全て無治療で回復した。

今後もモルヌピラビルに関する多くの論文が出てくるものと思われます。以前はその細胞毒性などが懸念されていましたが、本論文における14頭にも重大な副作用は認められませんでしたし、当院の治療例においても認められませんでした。今後モルヌピラビルは猫伝染性腹膜炎FIPの治療薬の主流となるかもしれません。

猫伝染性腹膜炎FIPの治療費について

ラブゲリオという国内販売の先発品もありますが、海外の製薬会社製造のジェネリック医薬品を用いることにより、治療費もかなり安く抑えられます。GS441524やMUTIANを使用した治療では100万円以上した治療費ですが、モルヌピラビルのジェネリック医薬品を用いればその3−4分の1くらいに抑えることができます。

FIPの治療は高額だ、、と諦める前に、ぜひ当院に一度ご相談下さい。

当院でのモルヌピラビルによるFIP治療に関するブログです↓

*ちなみにMUTIANはその違法性が中国で認められ、製造責任者が逮捕されています

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